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埼玉県、障害児の二重学籍を認める方針


2003/04/30
■埼玉県、障害児の二重学籍を認める方針

宮城県、神奈川県、千葉県、東京都など次第にノーマライゼーションや統合教育推進への機運が高まりつつある中、埼玉県の土屋知事は「全ての障害児に普通学級籍を認める」という方針を発表した。

障害のある子どもたちが盲、ろう、養護の各学校と同時に普通学級にも籍を置く二重学籍の制度で、健常児と一緒に活動できるようになる。
しかも、就学時検診で普通学級に通うことも可能と判定された子どもたちだけでなく、盲・ろう・養護学校などへの入学が望ましいとされた子どもたちにも地域の普通学級への在籍を認めるというもので、今までの法令の規定にはない国内初の画期的なものである。
分離教育ではなく、教育本来の姿である統合教育が実現するということで、障害のある子の保護者からだけでなく、関係者からも歓迎の声が聞こえる。

土屋知事はかつてインドの首都ニューデリー校外の障害者施設を訪問し、障害のある子もない子も一緒に活動し、学び、遊ぶ姿を見た時、これが本当のバリアーフリーだと思ったという。だが、このことを話したら当時の厚生省はよく理解してくれたが、文部省は理解してくれなかったという。しかし、「これは私の以前からの念願であった」という知事は、「これを実現して参りたい。文科省が反対してもやりたい。教育委員会でも検討していく。お金はかかると思うが、政治には逆転の発想が大切だ。」と、熱い思いを語っている。

今回の方針はボトムアップではなく、全く土屋知事からのトップダウンで、教育長との協議の中で決まったことだという。教育長も教育畑からの生え抜きではなく、知事部局の総合政策部にいた人だからできたのではないか、という声もある。いつまで経っても変わらない現場を変えるには、時には鶴の一声も必要なのかもしれない。

これより以前、すでに埼玉県では「新障害者プラン」の基本理念で、「障害のある人々が社会を構成する一員として障害のない人と分け隔てられることなく、ともに生活し、活動する社会を目指す」「施設に入所している障害者も地域で暮らすことが可能となるような施策の推進」する、さらに、教育においても「ノーマライゼーションの理念の実現には、障害のあるなしに関わらず、こどもの頃から共に育ち、共に学ぶことが大切」だと書かれていた。しかし、学校教育の現場では分離教育が厳然と存在していたのである。今回の土屋知事の決意表明は、その基本理念の学校教育の現場での具現化に大きく一歩を踏み出したものと言える。

これまでも「ノーマライゼーション」の考え方はあり、国の方針でも、交流教育やボランティア教育を推進すると謳っていた。しかし、一方で特殊教育に力を入れるなど、改訂・学校教育法施行令においても「原則分離」を前提としたものでもあった。「認定就学」という形で例外的に普通学校での就学を認めていたに過ぎなかった。
県教委の「障害のある生徒の埼玉県公立高等学校入学者選抜学力検査出願の際の留意事項及び選抜の際の取り扱いについて」では、「障害による不利益を生じさせないために」という目的を掲げているが、「介助職員を置くことはできない」との文言もあり、介助を必要とする生徒の排除につながる施策を取り続けてきた。こういう教育行政に対して保護者から強い批判の声が上がっていた。
ノーマライゼーションを前提とするなら、いわゆる「交流事業」も「ふれあい事業」も本来必要がない。通常学級での就学を原則とし、例外的に特殊学級や盲・聾・養護学校での就学を認定するというのが本来のあり方だろう。

 今回、土屋知事の決意は固く、たとえ文部省が反対したとしても貫く方針のようだ。ぜひ万難を排して推進してほしいものだ。これが実現するなら、社会に大きな風穴をあけることになるだろう。




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