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各家庭に教育バウチャーの交付を


2002年10月24日
各家庭に教育バウチャーの交付を

 埼玉県は来年度から、私立学校に通う子どもたちの授業料や入学金の補助制度について、来年度からバウチャー(切符)制の導入を検討していると言います。

 これまで私立学校に通う子どもたちの家庭に対しては、県は授業料等の補助金制度を設けており、年額4万2千円〜13万2千円を交付してきました。今年度からは、失業した保護者に対しては15万円を交付してきたそうです。

 これらの交付金は、学校を通しての銀行振り込みという形で家庭に交付されてきました。しかし、手続きの煩雑さや交付金が学費の補助金以外に使用される問題もありました。そこで、県では手続きの簡素化と交付金の使用目的を限定するため、バウチャー制を導入するというものです。

 このバウチャーは授業料や入学金等に使用目的が限定されていて、個人が換金したり他人に譲渡することはできないようになっています。県からバウチャーの交付を受けた保護者は、学校に個人の負担分と共にバウチャーで授業料等を支払います。学校側は保護者から集めたバウチャーを県に提出し、補助金相当額を受けることになります。

「バウチャー」のコンセプトをいまから50年前、エコノミストのミルトン・フリードマン氏が構想したといいます。第二次世界大戦後の「GIビル」(復員した若者が大学などで学べるよう、公的資金の支給を決めた法案)にヒントがあったようです。
 アメリカの大統領選に注目した人はご存知と思いますが、このバウチャー制度はブッシュ政権が公立学校の再生の切り札として導入したものです。

 現在、このバウチャー制度は、オハイオ州、ミネソタ州、フロリダ州、カリフオルニア州などをはじめ、チャータースクールと並ぶ大きな教育のうねりとなっています。連邦政府、州政府レベルでも、バウチャーの制度化を目指す動きが強まりつつあります。もともとは、教育成果の不振な公立学校の経済的に恵まれない子ども達を私立学校に移動するのを支援するためのシステムでしたが、今や障害者教育の支援を含め、所得制限規定を設けず、貧困でない家庭の申請も可能となってきています。

 しかし、日本ではこうした試みは全国初のことだそうです。このバウチャー制度は、現在のところ私立学校の入学者に限定したものですが、日本においても今後、様々な使用の可能性を秘めているように思います。

 そこで、一つの提案です。これを私立学校に限定せず、公立学校にも広げて学校の選択制や公立学校の経営等と連動させてはどうかということです。

 今までの公教育は上で決めたことをただ受けるだけの「配給制の教育」「公共事業の教育」でした。しかし、こういう教育のやり方はもう半ば破綻しているように思います。多少の修繕を施せばまた使えるという耐用年数を超えてしまっているとも思います。ここで必要なのは対処療法的な間に合わせの修繕ではなく抜本的な建て替えだと思います。その時に、このバウチャー制度は意外な効用を発揮するのではないでしょうか。

 そのために必要なことは、私立学校で学ぶ子ども達だけにバウチャーを交付するという姑息な手段を取るのではなく、全ての学齢期の子ども達にバウチャーを交付することです。そして、保護者と子どもはそのバウチャーを使って自分の進みたい学校を自由に選択できるようにします。私立学校にするか公立学校にするか、公立学校であればどこにするか、そういう選択を誰もが出来るようにするのです。

 今までは、国や自治体から出る公的な教育予算は自動的に学校に回っていました。しかし、本来そういう教育費用は子ども達が対象となるはずのものです。子どもや保護者がどの学校を選択するか、子どもがどこで学ぶかは自由なはずです。あたかも国や自治体が設定した学校に行くことが当然のようなシステムになっているのはおかしいことです。

 不登校や病気などの場合、学校外の学びの選択肢が認められていいはずです。それがただ学校に籍を置いているというだけで教育費用が学校に自動的に回るようになっているのはとてもおかしいことです。

 もし、そのバウチャーが学齢期の子ども達に一律に交付されるようになれば、そして、そのバウチャーを学校だげでなく子どもが本当に学びたいという場でも使えるようになれば、学校には通えないけれども学びたいという子ども達にどれほど助けになることだろうと思います。公立の学校を離れたということだけで、精神的な負担に加え余計な経済的負担まで個人が受けなければならないとはとても不合理なことです。

 そのためには、まず子ども達の学びは学校だけで行わなければならないという発想そのものを変える必要があります。学校教育の存在意義が問い直されている今、21世紀の子ども達の学びのあり方として、そこまで広げてもいいのではないかと思います。

みなさん、どう思われますか?



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