トップへ
トップへ
戻る
戻る


豊かな時代の子どもの金銭感覚


65
豊かな時代の子どもの金銭感覚…… 金銭と親の愛は別物

 今年のお正月に子どもたちはどれだけお年玉をもらうのだろう。長引く不況の中で子どもたちの金銭感覚は一向にバブル期を抜け出ていないようにも見える。これからしばらく、お札を無造作に扱う子どもたちの姿が見えることだろう。

 子どもたちは、お金を命の次ぎに大事なものと考えている。それは結構なことなのだが、お金の額に対する感覚が一昔前とは飛び抜けて違っているようだ。一回の買い物で二千円、三千円のみならず四千円や五千円の買い物もざらであるという。小学五、六年生の子どもが買い物をして、ちょっと高いかなと考えるのは五千円以上、高いなと思うのは一万円以上であるという。

 しかし、これは不思議なことで、小学五、六年生一〇〇人に聞いた調査では、子どもが親から毎月の小遣いとして与えられるのは約千円程度。子どもが実際に欲しいと思っている額は千五百円程度。ところが、実際に子どもは小遣いより高い買い物をしているのである。中には、こつこつ貯めて自分の好きなものを買う子もいたり、お手伝いをして稼ぐ子もいるようだが、どうもそれだけではないらしい。

 実は、高い買い物は自分の毎月の小遣いでしているのではないらしいのである。高い買い物はお小遣いとは別に親からもらうことが多く、また、少子化の中で子どもが少ないこともあって、おじいちゃん・おばあちゃん、親戚の人たちなどがあげてしまう例が多いらしい。そして、その額も一万円の相場を下らない。これが、誕生日だの正月だのとなるとさらにアップし、いろいろなところからどっと押し寄せることになる。かくして、大金を手にした子どもたちが出現する。そして、その大金を当て込んで様々なゲーム業者やおもちゃ業者などが子どもたちをあの手この手で誘惑することになる。

 それまでテレビのコマーシャル等でお母さん役を演じて、ひと頃、理想的なお母さんナンバーワンにさえあがっていた女優の息子が度重なる薬物使用でマスコミの話題をさらったが、そのもとになったのは一月の小遣いが30万円とも言われる野放図な金銭の与え方にあったようである。あえて子どもに貧乏を体験させる必要はないが、このような無原則な金の与え方は子どもの金銭感覚を麻痺させるだけでなく、親の愛情をも錯覚させてしまう

 このような生活に慣れると、法外な金額を手にしても、子どもはそれほどの愛を親から感じる取るわけではない。銭感覚の麻痺と同時に親の愛にも麻痺してしまう。かつて親が特別な時に買って与えたもの、それがとても嬉しかったという感激は今の子どもたちにはない。子どもが望む物が容易に手に入る時代、それが果たして子どもにとって幸せなことなのかどうか、親は心して考えなければならない。



トップへ
トップへ
戻る
戻る