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看護婦(士)資格取得のためのコース
--- 後で悔やまない進路の選び方 ---


1995/12
■看護士資格を取得するために
馬場 由美子

 「看護婦(士)になろうかな」…
今この時期、そんなことを考えている受験生も結構多いんじゃないかしら。ところが、よく、看護婦(士)の資格の取り方にいろいろなコースがあることを知らずに勧められるままに学校に入って、いったん退学してまた希望校へ入り直したなどという話を耳にすることがあります。進路選択の時、必要にして正確な情報が得られなかったということが原因のようです。

 ところが、普通の学校の先生方も今まで偏差値ではかれた一般の入試ならともかく、職業選択の進路指導についての正確で詳しい情報や知識を持ち合わせていないことが多く、特に看護婦(士)のコースや資格に関してその傾向が強いようです。しかし、本当に適切な進路指導が望まれるのは、ここで将来の職業を決めようとする生徒たちに対する適切な指導ではないでしょうか。そこで、『ニコラ』では、「後で悔やまない看護婦(士)の資格を取るためのコースの選択」を取り上げてみました。

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 準看護婦廃止論への論議が十月の朝日新聞紙上で展開されていました。神奈川県の須田真純さんという、看護大学を志望している高校生の投書は、「社会情勢において看護は広い範囲での患者のケアが、社会のニーズとなっている。そのニーズにこたえるためには専門職としての看護を確立すべきだ。そのためには新たな准看護婦養成よりも、大学を増やす方が妥当」という内容のものでした。
 内容から、彼女は日本とアメリカの看護大学の数など、教育制度の違いについても詳しい情報を得ていることが推測できました。自分の目指すべき方向を、確かな情報をもとに判断し、決定し、行動しようとしているその姿は、まさに専門職に必要なものだといえましょう。

 話は少し飛びますが、聖路加看護大学の四年生(当時)の山本美量さんは、三年課程の専門学校と四年課程の大学教育の違いについて、次のように述べています。
 U看護(学)の本質を貫く理論を基盤とした、科学的体系教育VとUマンパワー養成を目的とした実践教育Vとの比重の差ではないかと。言うまでもなく初めの方が大学教育であり、後の方が病院付属学校や専門学校を指しています。さらに彼女は、病院付属等の学校「企業内教育」が専門職教育を担えない理由についても、明快に述べています。企業内教育の目的は、「企業の利益に貢献しうる労働力の養成・確保」にあるため、一企業としての病院の利益と、健康という基本的人権を有する国民全体の利益とは必ずしも一致しないと。(第26回看護懸賞論文の優秀作)

 アメリカと日本の看護教育制度には大きな差があります。一九九五年に日本でようやく四十校になった看護大学が、アメリカでは一九九二年に五百一校、日本では六校のみの大学院博士課程は、アメリカでは五十三校、修士課程は日本は七校、アメリカは二百三十八校と、ケタ違いであります。

 それもその筈、日本の看護婦等の法的身分を示す「保健婦・助産婦・看護婦法(通称・保助看法)は、終戦直後の昭和23年にGHQの指導によって作られたと言います。その条文には、看護婦とは医師の指示により(略)療養上の世話と診療の補助を主な業とするといったことが規定されているのです。条文通りの解釈だと、看護婦は医師のアシスタントであって、専門職ではないことになります。

 日本では、一九五〇年頃にようやく看護婦の養成が三年課程の病院付属校で始まりました。「アメリカの教育制度」では、表Tの@の「ディプローマ三年」というところに当たります。ディプローマは、九二年では百四十五校しかありません。短期大学に当たるコミュニティーカレッジ(二年)の八百三十八校、大学の五百一校に比較すると、わずかな数です。実は、日本で三年の養成課程が始まった一九五〇年頃には、アメリカではもう、このディプローマは廃止して大学教育に切り換える作業が始まっていたといいます。日本では一九九〇年に入ってから看護大学が増設され始めています。「日本の看護教育はアメリカに四十年遅れている」と言われる所以がここにあります。(人口比は、一九八九年度で、アメリカ二億四千七百二十三万五千人、日本一億二千三百二十五万五千人)

 表TのBを見ると、日本の看護職者養成の主流が、専門学校などの三年課程であることが一目瞭然です。
 さて、先に、二人の学生の鋭い論考を紹介した理由について、まだ述べていませんでした。それは、高校生の方については、必要な情報を入手し、自分で判断し、決定していく姿勢が専門職に通じるものだと言いましたが、看護大学生の方は、この高校生が志望校の看護大学へ入学し、整った学習環境の中で存分に勉強した、四年後の姿と見えないでしょうか。
 同じ看護婦という国家資格を取得するにも、その学習プロセスは表TのAのように、いろいろとあります。ここで、表TのBをよくご覧下さい。看護大学では、図書の蔵書数が十七万三千冊あるのに、三年課程の専門学校ではわずか七千冊しかありません。専任教員一人当たりの学生数も大学は八人に比べ、専門課程では二十人です。こうした学習環境の違いは、大きな差を生みます。それぞれの学校へ入学した時点では大差のなかった能力が、卒業時点では大きなものになってしまうわけです。看護大学生の山本さんは、恵まれた環境で勉強し、資料・文献もふんだんに使って立派な論文も書くことができるように成長したと言っていいのではないでしょうか。

 進路選択は正しい情報を得るところから始まります。自分の可能性を最大に伸ばすためにもチャレンジ精神で頑張ってみましょう。その中から道は開かれていくでしょう。自分の道は自分で切り開いていくしかありません。





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